50代介護職の現実

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(2007年撮影)

15年ほど前、中国の泰山に登る際に「論語」で有名な孔子を祀る「孔子廟」にも立ち寄った。

泰山のある山東省はかつて「魯」と「斉」という二つの国があった場所で、孔子は「魯」の国の人である。

その「論語」の中にこんな言葉がある「四十にして惑わず、五十にして天命を知る(四十而不惑、五十而知天命)」

「天命を知る」というのは、自分が何がしたいのかがわかった、というくらいの意味だろう。

自分もいま50代だが、介護職という仕事は気に入っている。

仕事はキツイし、給料は安い。

だが、暮らしやすく部屋を整えたり、楽しく過ごすために工夫することが好きなので、施設での仕事は好きだ。

技術や知識も学べば学んだだけ現場で活かすことができる。

生活のために選んだ仕事だが、営業職や工場の仕事、販売業よりも自分に合っていたのだろう。

年末年始も休めないし連休もなし。

贅沢もできないが一応自分1人くらいは何とか食っていけている。


収入と支出のバランス

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年齢  50代

学歴  高卒

仕事  特別養護老人ホーム勤務 介護員

基本給 18万9,600円(勤続8年目)

休日  週休2日+祝日分+リフレッシュ休暇4日
   (いつ休日になるかは勤務表による)

年収  338万3,024円(2021年度)
手取り 228万6,000円(2021年度)

家賃  3万8,300円(2DK築50年以上の団地)

1年間にかかる生活費 199万3,619円(2021年)



年収300万円で家賃4万円弱だとこのくらいの生活になる。

車は普通車から軽自動車に乗り換えた。

旅行もコロナ禍のせいや連休が取れない職種ということもあるが、介護職になってからは行っていない。

これは年齢のせいもあるだろう。

出費が大きいというより、遠出する体力と気力が無くなってきた。

職場の同僚や転職した元同僚と食事をしたり飲みに行くことはけっこうあったが、それもコロナ禍のせいで現在は自粛中。

介護職は意外に横のつながりがあって、研修などで知り合いになり情報交換することもある。

飲みに行くといってもチェーンの居酒屋や地元で気軽に入れるお店が多かった。


50代独身男性の1日

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起床      退勤
↓        ↓
朝食(自炊)  買い物
↓        ↓
歯磨き、髭剃り 帰宅
↓        ↓
シャワー    洗濯
↓        ↓
髪のセット   夕食(自炊)
↓        ↓
出勤(車)   ネットで動画視聴
↓        (プライムビデオ、YouTubeなど)
          ↓
         風呂
          ↓
         歯磨き
          ↓
         就寝



家と職場の往復。その間に買い物をするというのが基本スタイルだ。

特に変わったことは何も起こらない。

休みの日や夜勤のある昼間は、これに掃除や片付けが加わり、たまに昼食を外に食べに行ったり本屋や喫茶店に寄る程度だ。

団地暮らしだが隣近所との付き合いは無いし、自治会にも入っていない。

たまに新聞や宗教の勧誘、宅配便の配達員がドアチャイムを鳴らすくらいで来客もない(新聞はとっていない)

電話やメールで話す友人が1人いるが、県外なので会うのは年に数回だ(コロナ禍でこれも自粛中)

脳梗塞で倒れているので、退職したら高齢者用の「見守りサービス」の利用を本気で考えた方がいいかも知れない。


介護職は結婚できない?

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日本では男女ともに未婚率が上昇傾向にある。

内閣府の資料によると、50代の男性4人に1人は独身なのだそうだ。

 
2020年50歳時の男女の未婚率(結婚未経験)

男性:25.69%
女性:16.37%
(内閣府男女共同参画局資料より)


ちなみに1990年50歳時の男女の未婚率は男性 5.57%、女性 4.33% だった。
(国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2021)より)

50歳の時点で未婚の場合、それ以降に結婚するケースは少ないと考えられることから「50歳時未婚率」が、死ぬまで独身でいる人の割合を示す「生涯未婚率」を示す数字としても使われる。

「介護職だと結婚できない」という話も聞くが、未婚、晩婚化は日本全体にいえることで介護職に限った話では無い。

うちの職場(特別養護老人ホーム)では結婚後、子育てしながら働いている人は多い。

出産後の職場復帰を助ける制度として、育休制度、時短制度などもあり、比較的他の職業より勤務時間に融通が効くので働きやすい職種だとは思う。

確かに給料は安く、勤務時間も不規則で夜勤もあるので大変だとは思うが、夫婦共働きで頑張っている介護職はけっこういる。

未婚率の上昇は「給料の安さ」というより「必ずしも結婚する必要はない」と考える人が増えたためだともいわれている。


50代今後どうする?

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(2007年撮影)

「四十にして惑わず、五十にして天命を知る」といった孔子だが、50代で魯の国の「大司冦」(だいしこう、警察裁判を管理する司法の最高責任者)に任命されるも、55歳の時に職を辞して13年に及ぶ亡命生活に入る。

魯の国の政治に失望したとも、失脚させられたともいわれている。

あの孔子ですら50歳を過ぎて国を転々とする生活を送っている、いわんや凡人をや、だ。

逆に江戸時代に日本地図を作った伊能忠敬は、55歳の時に全国の測量を始め、自身は71歳まで続けて「大日本沿海輿地(よち)全図」の完成に尽力した。

何が起こるのかわからないのが人生だ。

孔子の言葉はこう続く「六十にして耳従う、七十にして心の欲する所に従いて矩(のり)を踰(こ)えず(六十而耳順、七十而従心所欲、不踰矩)」

「耳従(したが)う」は、他人の意見に反発を感じず、素直に耳を傾けられるようになるの意。

「矩(のり)を踰(こ)えず」の「矩(のり)」は規則や基準のこと。「踰(こ)えず」は「超(こ)えない」で逸脱しないという意味で、自分の心に思う事をそのまま行なっても、まったく道徳の規範から外れることがない、となるらしい。

職場で多くの高齢者と接しているが、そんなお年寄りは見たことがない。

ずっとお嫁さんや姑の悪口を言っている人。

介護員を陰で「あのデブ」と呼んだり「変な人」呼ばわりしている人。

長年に渡って培われてきた性格はそう簡単には変わらない。

そんな「人間は歳を取るとどうなるか」を知ることができるのも、介護職の魅力のひとつだろう。

「人間って面白い」と思えるのなら介護職に向いている。

彼らを見ていると「50歳なんて人生まだまだだな」と思ってしまう。

うちのユニット(ユニット型特養1ユニット定員10名)の平均年齢は90歳をこえている。

50代からしたらあと40年もある。

身の回りにあるスマホも服も車も40年後には跡形も無いだろう。

お金も残せそうに無いのでアテにはならない。

残っているのは自分の体と性格ぐらいだ。

実に頼りない老後になりそうだ。




論語 (中公文庫)
中央公論新社
2020-04-30










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