お疲れ様でした

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2023年1月29日(日)に行われた第35回介護福祉士国家試験

受験された方、お疲れ様。

試験が終わった直後からSNSでつぶやかれた内容を見ると、今年は全体的に簡単な問題が多く、午前よりも午後の問題の方が難易度的には簡単だったという声が多く聞かれた。

今回から午前と午後の出題科目に若干の変更があったのでそれも影響したのだろう。

平均点も上がるだろうというのが大方の予想だ。

毎回話題になる介護福祉士試験の「珍問・奇問」も今回はあまり話題にならなかった。

一番多く取り上げられていたのがこんな問題だ。


発達と老化の理解

問題31 今、発達の実験のために、図のようなテーブル(テーブル表面の左半分が格子柄、右半分が透明な板で床の格子柄が透けて見える)の左端に、Kさん(1歳1か月)を座らせた。テーブルの反対側には母親が立っている。Kさんは、格子柄と透明な板との境目でいったん動くのをやめて、怖がった表情で母親の顔を見た。母親が穏やかにほほ笑むと、Kさんは母親の方に近づいていった。
 Kさんの行動を説明する用語として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 自己中心性
2 愛着理論
3 向社会的行動
4 社会的参照
5 原始反射



正解は 4 


ここには図が載せられないのでわかりづらいが、幼児問題は出題頻度が高く、普段高齢者介護しかしていない介護員にはあまり触れる機会がなく難問になりやすい。

ちなみに「社会的参照」というのは、親の行動を参照して物事の善悪などを判断することで、第32回試験でも出題されている。


過去記事
  ↓
介護福祉士国家試験対策 一週間前
施設介護員の鬼門「生活支援技術」と「発達と老化の理解」




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今回出題された「発達と老化の理解」からもういくつか紹介しよう。


問題32 コールバーグ(Kohlberg,L.)による道徳性判断に関する次の記述のうち、最も高い発達段階を示すものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 権威に服従する。
2 罰を回避する。
3 多数意見を重視して判断する。
4 損得で判断する。
5 人間の権利や平等性などの倫理に従って判断する。


正解は 5


ローレンス・コールバーグ(1927年-1987年)はアメリカの心理学者で、道徳性発達理論の提唱者。

子供の認知能力の発達という観点から道徳性の発達を理論化した人物だ。

彼が提起した「道徳性発達理論」は、人間の道徳的判断に注目し、その判断が下記のような3つのレベルと6つの段階をもつというものである。

「水準1」前慣習的水準
・段階1 罰と服従志向
     罰を回避し、権威に服従する
・段階2 道具主義的相対主義者志向
     取引や有効性の観点から判断する

「水準2」慣習的水準
・段階3 対人関係の調和あるいは「良い子」志向
     多数意見や承認されることを重視した判断をする
・段階4 「法と秩序」志向
     規則や社会的秩序を守ることを重視する

「水準3」脱慣習的水準
・段階5 社会契約的遵法主義志向
     個人の権利や社会全体の価値に従って合意することを重視する
・段階6 普遍的な倫理的な原理志向
     人間の権利や平等性などの倫理に従って判断する


これはコールバーグという名前も「道徳性発達理論」自体を知らなくても「最も高い発達段階」を選べばいい問題なので、正解した受験者は多いだろう。

自分も介護職を8年続けているが、コールバーグという名前は初めて聞いた(研修でやったかも知れないが記憶にない)

こうした知識が無くても経験や論理的思考で答えられる問題が多いと難易度は下がる。


問題34 ストローブ(Stroebe,M.S.)とシュト(Schut,H.)による悲嘆のモデルでは、死別へのコーピングには喪失志向と回復志向の2種類があるとされる。
 喪失志向のコーピングとして、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 しばらく連絡していなかった旧友との交流を深める。
2 悲しい気持ちを語る。
3 新たにサークル活動に参加を申し込む。
4 ボランティア活動に励む。
5 新しい生活に慣れようとする。


正解は 2


横文字が多用される介護福祉士試験。

「コーピング」というのは「ストレスコーピング」などメンタルヘルス関係で使われる言葉だが「問題に対処する、対応する」という意味の「cope」から派生した言葉だ。

これも言葉の意味はわからなくても、何となく「喪失志向」であって「回復志向」でないものを選ぶと考えれば、2 以外は前向きな行動を起こしているので、答えられそうな問題である。

最後に「生活支援技術」から1問。


問題93 胃・結腸反射を利用して、生理的排便を促すための介護福祉職の支援として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 歩行を促す。
2 起床後に冷水を飲んでもらう。
3 腹部のマッサージをする。
4 便座に誘導する。
5 離床する時間を増やす。


正解は 2


胃・結腸反射というのは食後に大腸(結腸)の運動が活発になることを指し、通常は朝食後にもっとも強い胃結腸反射が起こる事が知られている。

早い人で5分、遅い人でも食後30分くらいすると胃結腸反射が現れ、下行結腸からS状結腸にあった腸内容が一気に直腸へと送られて便意につながる。

一瞬「常温」じゃなくて「冷水」でいいの?

と冷たい物を嫌う高齢者に多く接している介護職は思ってしまうかも知れないが、腸管の運動を刺激する食品として、冷水などの寒冷刺激、脂類などの大腸粘膜への刺激などがあるので、正解は 2 。


合格基準点は高くなる

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介護福祉士国家試験は1問1点で全125問。

このうち問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数が合格基準点となる。

直近では72点〜78点くらいがこれまでの合格基準点だったが、今回第35回試験の基準点はこれより高くなりそうだ。

しかし総得点の60%である75点より10点以上補正されたことはこれまで無いので、85点まで高くなるとは考えにくい。

考えられるのは、78点〜84点の間だろう。

様々な所で解答速報が出されているので、受験した人は自己採点して欲しい。

90点以上とれていれば安心(科目群すべてにおいて得点がある前提)

75点以下なら来年に向けて再チャレンジだ。

合格発表は、2023年(令和5年)3月24日 金曜日 14時 となっている。






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