50代元アニメーターのアニメレビュー
「Vivy -Fluorite Eye's Song-(2021)」
(ネタバレ含む)
VIVYと書いて日本語読みは「ヴィヴィ」
主人公である自律人型AIの呼び名である。
近年では珍しいオリジナルテレビアニメ。
制作は「甲鉄城のカバネリ」「進撃の巨人」などのWIT STUDIOが担当している。
Amazonプライム・ビデオで視聴。
100年後に起きるAIと人類の争いを止められるか?
まるで「ターミネーター」のような設定だが、主人公は人間ではなくAI
結末がどうなるのか気になって、全13話+特別総集編の全話を1日で視聴してしまった。
ストーリー
「ヴィヴィ」はテーマパークで歌を披露する史上初の自律型人型AIだ。
この世界のAIはそれぞれ使命を与えられており、その使命こそが、AIの与えられた役割であり、行動規範であり、存在理由になっている。
ヴィヴィの使命は「歌でみんなを幸せにする」こと。
舞台は2061年。
史上初の自律型人型AIとして注目されたヴィヴィだが、音階をたどるだけの彼女の歌を聞いてくれる客は少なく、今日もステージには閑古鳥が鳴いている。
「心をこめて歌う」ということがどういうことなのかわからずに悩むヴィヴィ。
そんな彼女のプログラムに突如、凄惨な争いの映像が映し出される。
銃で人間を殺すAIロボット。
小型のドローンが人間の頭に体当たりし、炎と爆発がテーマパークを包んでいる。
そして彼女の前に「100年後の世界からやって来た」というAIプログラム「マツモト」が現れこう告げるのだ。
「今後100年をかけて、あなたには僕と一緒にAIを滅ぼして欲しいんです」
AIの急速な発達。今後100年の間にその発展をうながす、AIの歴史上の重要な転換点「シンギュラリティ(技術的特異点)」がある。それに介入することで、AIと人類の未来を変え、悲惨な争いを止めようとするのが、「マツモト」のプログラムを100年前のこの世界に送り出した者の「シンギュラリティ計画」だ。
ここから、100年に渡るAIと人類の物語が始まる。
水色の髪と瞳をした女性の姿をしている主人公、通称「ヴィヴィ」と、早口でまくしたてる未来のAI「マツモト」の掛け合いが楽しい。
ヴィヴィの身体は当然機械でできており、人間の何倍もの運動性能を持っている。
腕がちぎれても取り替え可能で、分厚いコンクリートの壁も持ち上げることができる。
対してマツモトの本来のボディはキューブの形をしており、のちに自身の分身を作り出すことに成功すると、いくつものキューブを合体させてヴィヴィを乗せて飛行形態になったりもする。
このデザインがダサい。
主人公や登場する女性型AIには力が入っているが、建物だったり、登場する乗り物やAIロボットのデザインがいまいち。生活用品にも未来感があまりない(宇宙服のデザインを見て欲しい)
物語の設定は複雑なのに、AIロボットの機能としての設定があやふやだったり(電気で動くってことはモーターなの?宇宙服着ているけど呼吸してるの?陽電子頭脳が実現してるの?)なぜプログラムだけなら過去へ行けるのかの説明も無い。
だが、このアニメの見所は、デザインでも戦闘シーンでもなく、アシモフやアーサー・C・クラークを彷彿とさせる「ロボットにとって心とは何か」というテーマだ。
これは言い換えれば「合理性や効率だけを考えて進歩してきた現代社会にも、やっぱり優しさや弱者に対する思いやり、人を愛する心が必要だよね」という感じだろうか。
人間ではないロボットが見せる人間らしい行動が、「人間とは何か?」という普遍的なテーマを語りかけてくる。
ここが面白い。
ただ残念なことに、歌という要素、美少女ロボット、タイムリープという要素を入れたことで、SF小説のような、重厚な世界観になりそこねている。
なぜAIが人類を滅ぼそうとするのかの理由付けもインパクトが薄いし、シンギュラリティとして設定されているエピソードも、キャラクター優先で影響の大きさがいまいち伝わってこない。
アシモフの「銀河帝国の興亡(ファウンデーションシリーズ)」のように、未来を予見し、それを少しでも被害が少ない方向へ変えるために奮闘する物語ではあるが、一人の歌姫(ディーバ)の目線で描かれるため、世界観が矮小化してしまった。
制作期間や話数に制限のあるアニメでは仕方がない所だが。
絵はキレイだし、動きもよく動いている。
テーマも古典的だが魅力的だ。
ただ、演出とキャラクターデザインは平凡。おいしそうな食事シーンとか、AI なのに散らかった部屋とか、緻密な街並みとか、もっと生活感のある描写、アニメーターの個性が見たかった。
大切なテーマである「心をこめるとはどういうことか?」の具体的な答えも演出家の独断でいいので物語の中で披露されていれば、もっと印象に残る作品になったと思う。
そう、印象に残りづらいのだ。
作品を見れば「ああ、あの監督ね」と思えるような個性がない。
監督の心がどこにあるのかわからない作品というと言い過ぎかも知れない。
「アニメに心をこめるとはどういうことか?」
制作者側にはそこのところをもう一度考えて欲しい作品だった。
監督 エザキシンペイ 原案・シリーズ構成 長月達平、梅原英司
制作 WIT STUDIO
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「Vivy -Fluorite Eye's Song-(2021)」
(ネタバレ含む)
VIVYと書いて日本語読みは「ヴィヴィ」
主人公である自律人型AIの呼び名である。
近年では珍しいオリジナルテレビアニメ。
制作は「甲鉄城のカバネリ」「進撃の巨人」などのWIT STUDIOが担当している。
Amazonプライム・ビデオで視聴。
100年後に起きるAIと人類の争いを止められるか?
まるで「ターミネーター」のような設定だが、主人公は人間ではなくAI
結末がどうなるのか気になって、全13話+特別総集編の全話を1日で視聴してしまった。
ストーリー
「ヴィヴィ」はテーマパークで歌を披露する史上初の自律型人型AIだ。
この世界のAIはそれぞれ使命を与えられており、その使命こそが、AIの与えられた役割であり、行動規範であり、存在理由になっている。
ヴィヴィの使命は「歌でみんなを幸せにする」こと。
舞台は2061年。
史上初の自律型人型AIとして注目されたヴィヴィだが、音階をたどるだけの彼女の歌を聞いてくれる客は少なく、今日もステージには閑古鳥が鳴いている。
「心をこめて歌う」ということがどういうことなのかわからずに悩むヴィヴィ。
そんな彼女のプログラムに突如、凄惨な争いの映像が映し出される。
銃で人間を殺すAIロボット。
小型のドローンが人間の頭に体当たりし、炎と爆発がテーマパークを包んでいる。
そして彼女の前に「100年後の世界からやって来た」というAIプログラム「マツモト」が現れこう告げるのだ。
「今後100年をかけて、あなたには僕と一緒にAIを滅ぼして欲しいんです」
AIの急速な発達。今後100年の間にその発展をうながす、AIの歴史上の重要な転換点「シンギュラリティ(技術的特異点)」がある。それに介入することで、AIと人類の未来を変え、悲惨な争いを止めようとするのが、「マツモト」のプログラムを100年前のこの世界に送り出した者の「シンギュラリティ計画」だ。
ここから、100年に渡るAIと人類の物語が始まる。
水色の髪と瞳をした女性の姿をしている主人公、通称「ヴィヴィ」と、早口でまくしたてる未来のAI「マツモト」の掛け合いが楽しい。
ヴィヴィの身体は当然機械でできており、人間の何倍もの運動性能を持っている。
腕がちぎれても取り替え可能で、分厚いコンクリートの壁も持ち上げることができる。
対してマツモトの本来のボディはキューブの形をしており、のちに自身の分身を作り出すことに成功すると、いくつものキューブを合体させてヴィヴィを乗せて飛行形態になったりもする。
このデザインがダサい。
主人公や登場する女性型AIには力が入っているが、建物だったり、登場する乗り物やAIロボットのデザインがいまいち。生活用品にも未来感があまりない(宇宙服のデザインを見て欲しい)
物語の設定は複雑なのに、AIロボットの機能としての設定があやふやだったり(電気で動くってことはモーターなの?宇宙服着ているけど呼吸してるの?陽電子頭脳が実現してるの?)なぜプログラムだけなら過去へ行けるのかの説明も無い。
だが、このアニメの見所は、デザインでも戦闘シーンでもなく、アシモフやアーサー・C・クラークを彷彿とさせる「ロボットにとって心とは何か」というテーマだ。
これは言い換えれば「合理性や効率だけを考えて進歩してきた現代社会にも、やっぱり優しさや弱者に対する思いやり、人を愛する心が必要だよね」という感じだろうか。
人間ではないロボットが見せる人間らしい行動が、「人間とは何か?」という普遍的なテーマを語りかけてくる。
ここが面白い。
ただ残念なことに、歌という要素、美少女ロボット、タイムリープという要素を入れたことで、SF小説のような、重厚な世界観になりそこねている。
なぜAIが人類を滅ぼそうとするのかの理由付けもインパクトが薄いし、シンギュラリティとして設定されているエピソードも、キャラクター優先で影響の大きさがいまいち伝わってこない。
アシモフの「銀河帝国の興亡(ファウンデーションシリーズ)」のように、未来を予見し、それを少しでも被害が少ない方向へ変えるために奮闘する物語ではあるが、一人の歌姫(ディーバ)の目線で描かれるため、世界観が矮小化してしまった。
制作期間や話数に制限のあるアニメでは仕方がない所だが。
絵はキレイだし、動きもよく動いている。
テーマも古典的だが魅力的だ。
ただ、演出とキャラクターデザインは平凡。おいしそうな食事シーンとか、AI なのに散らかった部屋とか、緻密な街並みとか、もっと生活感のある描写、アニメーターの個性が見たかった。
大切なテーマである「心をこめるとはどういうことか?」の具体的な答えも演出家の独断でいいので物語の中で披露されていれば、もっと印象に残る作品になったと思う。
そう、印象に残りづらいのだ。
作品を見れば「ああ、あの監督ね」と思えるような個性がない。
監督の心がどこにあるのかわからない作品というと言い過ぎかも知れない。
「アニメに心をこめるとはどういうことか?」
制作者側にはそこのところをもう一度考えて欲しい作品だった。
監督 エザキシンペイ 原案・シリーズ構成 長月達平、梅原英司
制作 WIT STUDIO
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