高齢者施設で亡くなるということ
先月、90歳になる利用者が施設で亡くなった。
施設に入居して4年。認知症で、ずっと車椅子生活だった。
介護の仕事をしていて、避けては通れないのが利用者の死だ。
特に特養(特別養護老人ホーム)では、多い時は月に数人亡くなることさえある。
亡くなる時があまりに重なると「連れていかれたね」なんて表現する職員もいるくらいだ。
人間いつ死ぬのかは誰にもわからない。
しかし、何となく「そろそろだね」「危ないね」という会話は職員の間で交わされる。
施設でよく見られる兆候(個人差あり)
・食欲が落ちて食べなくなり、体重が減る
・横になっている時間が増え、日中でもうつらうつらしている
・尿量が減る
・物事に対する興味が薄れ、内にこもりがちになる
言葉で表現できな感覚的な変化もある。
それは表情だったり、顔色だったり、長い時間一緒にいるからこそわかる「いつもと違う」雰囲気だったり。
病院を受診し、医師が「回復の見込みのない終末期」と判断すると、施設の看護師が家族に連絡を取り、状況の説明を行う。
最後は施設で、という確認が取れれば「看取り」ということになる。
看取り介護の内容
先月、90歳になる利用者が施設で亡くなった。
施設に入居して4年。認知症で、ずっと車椅子生活だった。
介護の仕事をしていて、避けては通れないのが利用者の死だ。
特に特養(特別養護老人ホーム)では、多い時は月に数人亡くなることさえある。
亡くなる時があまりに重なると「連れていかれたね」なんて表現する職員もいるくらいだ。
人間いつ死ぬのかは誰にもわからない。
しかし、何となく「そろそろだね」「危ないね」という会話は職員の間で交わされる。
施設でよく見られる兆候(個人差あり)
・食欲が落ちて食べなくなり、体重が減る
・横になっている時間が増え、日中でもうつらうつらしている
・尿量が減る
・物事に対する興味が薄れ、内にこもりがちになる
言葉で表現できな感覚的な変化もある。
それは表情だったり、顔色だったり、長い時間一緒にいるからこそわかる「いつもと違う」雰囲気だったり。
病院を受診し、医師が「回復の見込みのない終末期」と判断すると、施設の看護師が家族に連絡を取り、状況の説明を行う。
最後は施設で、という確認が取れれば「看取り」ということになる。
看取り介護の内容
全国老人福祉施設協議会の「看取り介護実践フォーラム」では「看取り」をこう定義している。
近い将来、死が避けられないとされた人に対し、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減すると共に、 人生の最期まで尊厳ある生活を支援すること。
ターミナルケア(終末期医療)との違いは、医師の判断に基づいた点滴や酸素吸入などの医療的ケアを行うかどうかだろう。
施設では医療的ケアは行えないが、住み慣れた場所で、ということで看取りを選ぶご家族は多い。
看取り対応が始まると、従来型特養の多床室に入居している場合は、静養室という個室に移される。
ユニット型特養の場合は、もともと個室なのでそのままが多い。
本来なら家族や面会者と、その部屋で過ごしてもらえるのだが、コロナ禍の今は制限があり、なかなか居室には入れない。
うちの場合、亡くなった時だけ、親近者数名の立ち入りが許可される。
介護施設(特養)での看取り介護
精神的ケア
施設では医療的ケアは行えないが、住み慣れた場所で、ということで看取りを選ぶご家族は多い。
看取り対応が始まると、従来型特養の多床室に入居している場合は、静養室という個室に移される。
ユニット型特養の場合は、もともと個室なのでそのままが多い。
本来なら家族や面会者と、その部屋で過ごしてもらえるのだが、コロナ禍の今は制限があり、なかなか居室には入れない。
うちの場合、亡くなった時だけ、親近者数名の立ち入りが許可される。
介護施設(特養)での看取り介護
身体的ケア
・バイタルサインの確認(体温、血圧、脈拍、SPO2の測定、チアノーゼの確認など)
・栄養・水分補給(食べれない場合でもガーゼで唇を湿らせたりする)
・口腔ケア(食べていなくても清潔保持などのために行う)
・口腔ケア(食べていなくても清潔保持などのために行う)
・清拭(入浴)・褥瘡ケア
・排泄ケア
・体位変換
・定期的な居室巡回
(これらはどれも利用者の負担にならないよう注意する)
(これらはどれも利用者の負担にならないよう注意する)
精神的ケア
・コミュニケーション(居室に入る度に話しかける)
・スキンシップ(手を握る、手足や背中をさするなど)
・安心できる環境の提供(室温や窓からの日差しの調整。音楽をかけるなど)
その他
・記録は介護を行う度に記入する
・申し送り、看護と夜勤時での呼吸停止時の対応、ご家族への連絡方法について打ち合わせしておく
時折、看取り中に意識がハッキリして、昔のように話し出す人がいる。
「中治り」と呼ばれているが、亡くなる直前に一時的に元気になる現象だ。
90歳の利用者も、亡くなる5日程前に急に記憶が鮮明になり、自分に「お嫁さんは見つかった?」と話しかけてきた。自分が独身なのを聞いて気にしてくれていたのは、もう2、3年も前の話で、最近では顔さえわからなくなって介護拒否、暴言を繰り返していたのに、その時は笑顔が見られ、洗濯物をたたんだり、昔のように他人を気遣う発言が見られた。不思議な瞬間だった。
逆に恐怖で混乱する人もいる。
「助けて、助けて」と訴える人。死の床から「起こして」と必死で手を伸ばし、しがみついてくる人。感情的になり涙ぐむ人。
エンゼルケア
しかしまったく食べられなくなると、その後の変化は急速だ。
経験的に一週間以内に亡くなることが多い気がする。
息を引き取られたら、ご遺体をきれいに整える作業を行わなければならない。
これをエンゼルケアと呼ぶ。
通常は看護師と介護職員で行う。たまにご家族が「やらせて欲しい」と申し出られることもある。
エンゼルケアで行うこと
・排泄物、内容物の処理
・清拭(身体を拭いて全身をきれいにすること。また綿詰めといって肛門などに体液漏出防止のためといって脱脂綿を詰める場合もあるが、うちの施設では行っていない)
・口腔ケア(歯ブラシやガーゼ、消毒用アルコールなどを用いて行う)
・着替え(施設が用意した浴衣に着替えさせる。着付けの際に「襟は左前」「帯は縦結び」といった決まり事がある。ご家族の要望で浴衣以外の場合もある)
・整容、化粧(髪を整え、簡単な化粧を行う場合もある)
お見送り
通常、特養には仏間のような場所がある。
家族が依頼した葬儀社がご遺体を引き取りに来ると、その場所でお見送りをする。
その際にうちの施設では、職員や親しかった利用者が見送る。
コロナ禍の現在は、利用者の見送りは制限されているが、その際に施設側から簡単なその方の紹介がなされる。何年に入所し、どんな方だったのか。通常は相談員が読み上げることになるが、いなければ介護職員が読む場合もある。
その後、ご遺族からあいさつがあったりして、霊柩車に運ばれる。
死と向き合う仕事
いまの施設で働き出して7年目だが、何度経験しても人の死には慣れることがない。
夜間は亡くなっても医師が来てくれないので、死亡確認は翌朝になる。
夜勤で一晩、亡くなった人を居室に寝かせたまま過ごしたことがあるが、死者の顔というのは本当に青白く、独特の雰囲気がある。命の消えた身体はどんどん冷たくなり硬くなっていく。
特養は順番待ちの人も多く、部屋が空くと半月もしないで次の人が入所して来る。
うちの施設には10年以上入所している人もいるが、特養の全国的な平均在所期間は3.5年だ。
死亡退所率は67.5%
入所している10人に7人近くが施設で亡くなっていることになる。
人間は老いて死んでいく。
介護の仕事は死を見つめ、死と向き合わなければならない仕事でもある。
高齢者に寄り添い、日々の生活を援助するということは、そういうことだ。
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その他
・記録は介護を行う度に記入する
・申し送り、看護と夜勤時での呼吸停止時の対応、ご家族への連絡方法について打ち合わせしておく
時折、看取り中に意識がハッキリして、昔のように話し出す人がいる。
「中治り」と呼ばれているが、亡くなる直前に一時的に元気になる現象だ。
90歳の利用者も、亡くなる5日程前に急に記憶が鮮明になり、自分に「お嫁さんは見つかった?」と話しかけてきた。自分が独身なのを聞いて気にしてくれていたのは、もう2、3年も前の話で、最近では顔さえわからなくなって介護拒否、暴言を繰り返していたのに、その時は笑顔が見られ、洗濯物をたたんだり、昔のように他人を気遣う発言が見られた。不思議な瞬間だった。
逆に恐怖で混乱する人もいる。
「助けて、助けて」と訴える人。死の床から「起こして」と必死で手を伸ばし、しがみついてくる人。感情的になり涙ぐむ人。
エンゼルケア
しかしまったく食べられなくなると、その後の変化は急速だ。
経験的に一週間以内に亡くなることが多い気がする。
息を引き取られたら、ご遺体をきれいに整える作業を行わなければならない。
これをエンゼルケアと呼ぶ。
通常は看護師と介護職員で行う。たまにご家族が「やらせて欲しい」と申し出られることもある。
エンゼルケアで行うこと
・排泄物、内容物の処理
・清拭(身体を拭いて全身をきれいにすること。また綿詰めといって肛門などに体液漏出防止のためといって脱脂綿を詰める場合もあるが、うちの施設では行っていない)
・口腔ケア(歯ブラシやガーゼ、消毒用アルコールなどを用いて行う)
・着替え(施設が用意した浴衣に着替えさせる。着付けの際に「襟は左前」「帯は縦結び」といった決まり事がある。ご家族の要望で浴衣以外の場合もある)
・整容、化粧(髪を整え、簡単な化粧を行う場合もある)
お見送り
通常、特養には仏間のような場所がある。
家族が依頼した葬儀社がご遺体を引き取りに来ると、その場所でお見送りをする。
その際にうちの施設では、職員や親しかった利用者が見送る。
コロナ禍の現在は、利用者の見送りは制限されているが、その際に施設側から簡単なその方の紹介がなされる。何年に入所し、どんな方だったのか。通常は相談員が読み上げることになるが、いなければ介護職員が読む場合もある。
その後、ご遺族からあいさつがあったりして、霊柩車に運ばれる。
死と向き合う仕事
いまの施設で働き出して7年目だが、何度経験しても人の死には慣れることがない。
夜間は亡くなっても医師が来てくれないので、死亡確認は翌朝になる。
夜勤で一晩、亡くなった人を居室に寝かせたまま過ごしたことがあるが、死者の顔というのは本当に青白く、独特の雰囲気がある。命の消えた身体はどんどん冷たくなり硬くなっていく。
特養は順番待ちの人も多く、部屋が空くと半月もしないで次の人が入所して来る。
うちの施設には10年以上入所している人もいるが、特養の全国的な平均在所期間は3.5年だ。
死亡退所率は67.5%
入所している10人に7人近くが施設で亡くなっていることになる。
人間は老いて死んでいく。
介護の仕事は死を見つめ、死と向き合わなければならない仕事でもある。
高齢者に寄り添い、日々の生活を援助するということは、そういうことだ。
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看取り加算算定条件
2006年の介護報酬改定から加えられた「看取り加算」
看取り介護加算(Ⅰ)
1当該施設の看護職員、病院または診療所、指定訪問看護ステーションのいずれかの看護職員との連携で24時間連絡できる体制をとること
2006年の介護報酬改定から加えられた「看取り加算」
特養などで看取りを行うと、算定できるものだが、条件は以下のようになる。
看取り介護加算(Ⅰ)
1当該施設の看護職員、病院または診療所、指定訪問看護ステーションのいずれかの看護職員との連携で24時間連絡できる体制をとること
2看取りに関する指針を定め、施設入所の際に、入所者とご家族に看取りに関する定めた指針について内容の説明を行い、同意を得ること
3医師、看護職員、ケアマネージャー、介護職員などが当該施設においての看取りについての協議を行い、指針について適宜見直すこと
4看取りに関しての職員研修を行うこと
5看取りケアは個室または静養室などを利用し、本人、ご家族、周囲の入所者に配慮すること
看取り介護加算(Ⅱ)
1加算(Ⅰ)の要件を満たしていること
2入所者に関し、配置医師と施設間で下記点の具体的な取り決めがあること
・緊急事態が起きた場合の注意点や情報連携の方法
・緊急事態が起きた場合の注意点や情報連携の方法
・曜日、時間帯別の連絡手段や診察依頼時間
3複数名の配置医師がいる、または協力関係にある医療機関の医師が、必要な際に24時間対応できること
4要件の2、3について、書面にし届け出ていること
5看護体制加算(Ⅱ)を算定していること
3複数名の配置医師がいる、または協力関係にある医療機関の医師が、必要な際に24時間対応できること
4要件の2、3について、書面にし届け出ていること
5看護体制加算(Ⅱ)を算定していること
看取り介護加算(Ⅰ)の単位数
死亡日以前4日以上30日以下 1日につき144単位
死亡の前日および前々日 1日につき680単位
死亡日 1日につき1280単位
看取り介護加算(Ⅱ)の単位数
死亡日以前4日以上30日以下 1日につき144単位
死亡の前日および前々日 1日につき780単位
死亡日 1日につき1580単位
看取り介護加算の対象事業者
特別養護老人ホーム(地域密着型施設を含む)
グループホーム
特定施設入居者生活介護(地域密着型施設を含む)
グループホーム
特定施設入居者生活介護(地域密着型施設を含む)