帰り際に起こる緊急事態

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ユニット型特養での夜勤勤務。
長かった夜が明け、ようやく朝になって出勤してきた早番に申し送りをし、夜勤終了。
さぁ帰れると、ふとリビングを見ると、車椅子に座ったお年寄りがタオルで自分の前のテーブルを拭いている。そのタオルが何故かすごく汚れていて、手も服も何かをこぼしたように見えるけど・・

嘔吐だ!

その方は騒ぐことも誰かを呼ぶこともなく、自分の吐いた物をタオルで拭き取ろうとしていたのだった。
認知症とはこういう病気なのだ。
勤務時間は終わっているが、さすがにこの状況で早番に任せて帰るわけにはいかない。
本人が一番困っているのはわかっているが、このタイミングの悪さ。
起床介助真っ最中の早番に緊急事態だと声をかけ、とりあえず呼吸はできているので、汚染物から遠ざけて、本人がこれ以上嘔吐物に触らないようにして処理にあたることにした。
介護施設で働くのなら、嘔吐処理は避けては通れない。

嘔吐物処理の方法

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注意点
 嘔吐物の中にはウイルスが含まれている可能性があるので、感染対策を必ず行う。


・使い捨てのビニール手袋を二重にはめる。
・使い捨ての袖付きエプロン、キャップ、保護メガネ、シューズカバーをつける。
・マスク着用。
・バケツにビニール袋(ゴミ袋)を二重にはめる。
・汚物にペーパーをかぶせる。


ほとんどの介護施設では、こうした汚物処理をするための道具一式があらかじめ用意されていると思う。うちの施設でも蓋付きのバケツの中に常備している。

・ペーパーで汚物を拭き取り、ビニール袋に入れる。
・拭き取った所を新たにペーパーでおおい、その上から希釈した次亜塩素酸ナトリウムをかける。
・数分置いたのち、ペーパーを回収してビニール袋に入れ、残った次亜塩素酸ナトリウムを拭き取る。
・使い捨ての雑巾などを使い、水などで洗い流す。
・ペーパーや拭き取りに使った雑巾をビニール袋に入れ、手袋を外す。
・新しい手袋をして、内側のビニール袋の口を閉める。


ここでペーパーと呼んでいるのはペーパータオルのことだ。
新聞紙は使われているインクが次亜塩素酸ナトリウムと反応してしまうとか何とかで、うちでは使っていない。嘔吐物を取り除くのには問題ないだろうが、その後の拭き取りには使い捨ての雑巾を使っている。
この段階で、嘔吐物は片付き、拭き取りも終わり、バケツには嘔吐物などを入れて口を閉じた内側のビニール袋と、バケツにかぶせたままの外側のビニール袋がはまっている状態だ。

・新しい手袋をしたまま、シューズカバー、保護メガネ、キャップ、エプロン、そして手袋を外してバケツの中に入れ、最後にマスクも外して外側のビニール袋を閉じて捨てる。
・処理後は手指消毒とうがいを行い、部屋の換気をする。


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こんな感じだ。
優先すべきは高齢者の安全と、感染の予防。
介護員も自分自身を守らなければならない。

嘔吐者は着替えてもらい、汚れた体の部分の消毒、清拭を行い、ベッドで側臥位になってもらう。
側臥位になってもらうのは再び嘔吐した時に備えてだ。
汚物処理が済んでから、バイタル測定を行い、まだなら看護師に連絡する。

慌てず素早く慎重に

こういう緊急事態は慣れるしかない。
他の職員との連携も必要だ。
次に何が必要か考えて動かなければならない。
嘔吐物がノドに詰まったら吸引機が必要だし、他の高齢者が車椅子から立ち上がったらそっちの方が危険だったりする。介護施設では同時多発的に様々な事が起こる。優先順位が大切になる。

慣れるために、職場研修をする施設もあるし、「介護技術コンテスト」のように介護技術を審査する場に参加したり見に行くことも手段のひとつだ。
自分が見学した「介護技術コンテスト」でも、この嘔吐時対応が取り上げられていた年があった。



嘔吐は介護施設では比較的よくある。
ごく軽いものから、ノロウイルスなど重篤度の高いものまで様々だ。
他の疾患に伴う嘔吐もある。

いずれにせよ、まず介護員がパニックにならない事。
床や車椅子、服や布団や本人が嘔吐物まみれになっていると、いったいどこから手をつけたらいいのかわからなくなるかも知れないが、大丈夫、いつかはキレイになる。
まずは自分の防御を固めて対処。
本人を優先。
次に感染予防。
洗濯物なんてゴミ袋に突っ込んでおいて後で考えればいい。
嘔吐物はペーパーでおおって目で見えなくしてしまう。
臭いも次亜塩素酸ナトリウムの強烈な臭いで打ち消す。

介護員を一年くらい続けていれば、食事中に嘔吐処理や便汚染の話をしても平気になる。
そんなものだ。






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嵐の後の・・・

結局、夜勤終了から嘔吐処理に時間がかかり、30分ほど帰るのが遅くなった。
早番はその後すべての高齢者を起こし、朝食の準備だ。
嘔吐の報告もしなけばならないし、記録も書かなければならない。
洗濯もある。

いっきに業務量が膨れ上がる。

不足の事態が起こっても、看護師や事務所が手伝ってくれるわけではない。
同じ施設にいても、ユニットの介護員は孤独だ。
ユニットの場合、介護員が1人で後始末から記録の打ち込みまで行う。
看護師からは定期的なバイタル測定と様子観察をするように早番に指示が出るだろう。
体温、血圧、脈拍、SPO2の測定といったバイタル測定も介護員が行う。

もしかしたらベッドで安静にしているようにと指示が出て、部屋で水分介助などもしなければならないかも知れない。

ユニットのデメリットはこういう所だ。