50代元アニメーターのアニメレビュー
「平家物語(2022)」
(ネタバレ含む)
日常の延長に歴史が描かれる
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり・・・
作家、古川日出男が訳した「平家物語」を原作にして、監督を山田尚子(「けいおん!」「聲の形」など)、脚本を吉田玲子、キャラクターデザイン(原案)を高野文子が手がけたアニメ版「平家物語」
淡い色彩に少ない線で描かれる人物。
高野文子さんの画風を生かした美術とキャラクターにまず目が奪われる。
木々の緑や、建物の装飾や、着ている服装の描き方がとても丁寧だ。
書き込みがすごいとか、リアルだとか、色彩が豊かとかではないのだが、少ない色と線の繊細な感じが世界観を作っている。
また登場する人間たちが妙に生身っぽい。
歴史上の人物たちが、妙に俗っぽく、人間っぽいのだ。
戦記物として描かれがちな「平家物語」を、原作には登場しない不思議な目を持つ少女「びわ(琵琶)」を登場させることで、異なった視点から描いた令和版「平家物語」
毎回楽しみに視聴した。
ストーリー
未来を見通す目を持つ少女びわは、平家一門にささいなことから琵琶法師であった自分の父親を殺されてしまう。
自暴自棄になったびわは、平家一門の棟梁、平重盛(平清盛の長男)の屋敷に忍び込み、重盛に「お前たちはじき滅びる」と言い放つ。
この平重盛がいい。
栄華を極め「平家にあらざれば人にあらず」とおごる平家の中にあって、極めて常識人。
びわと同じように不思議な目を持つ重盛には亡者が見える。
平家の武士がびわの父親を殺したことを知ると「すまぬ」と詫び、自分と同じように不思議な目を持つびわを屋敷に引き取り、息子の維盛(これもり)・資盛(すけもり)・清経(きよつね)の三兄弟と一緒に生活させることにする。
権力争いと陰謀の渦巻く宮中。
平清盛と後白河法皇との対立。
そんな中で描かれる、三兄弟とびわのかけ合いは子供っぽくもあり、人間味にあふれている。
自然描写も美しく、平安時代の暮らしを丁寧に描くことで、平家も人の子、決して争いを望む人ばかりではないということが伝わってくる。
そんな彼らが滅んでいく様がストーリが進むに連れて描かれていく。
それはびわの見た未来であり、変えることのできない視聴者が知る歴史的過去でもある。
止め絵が絵になるアニメ
まぁ、画面が美しい。
アニメーションの動きはそれほど激しくはないが、止め絵で一枚一枚がそれだけで作品になるんじゃないかというくらい「絵になる」場面の連続だ。
登場する女性たちの描写もこれまでの「平家物語」には無い解釈、描写がされている。
平清盛の娘であり、天皇の妃となる徳子。
作家、古川日出男が訳した「平家物語」を原作にして、監督を山田尚子(「けいおん!」「聲の形」など)、脚本を吉田玲子、キャラクターデザイン(原案)を高野文子が手がけたアニメ版「平家物語」
淡い色彩に少ない線で描かれる人物。
高野文子さんの画風を生かした美術とキャラクターにまず目が奪われる。
木々の緑や、建物の装飾や、着ている服装の描き方がとても丁寧だ。
書き込みがすごいとか、リアルだとか、色彩が豊かとかではないのだが、少ない色と線の繊細な感じが世界観を作っている。
また登場する人間たちが妙に生身っぽい。
歴史上の人物たちが、妙に俗っぽく、人間っぽいのだ。
戦記物として描かれがちな「平家物語」を、原作には登場しない不思議な目を持つ少女「びわ(琵琶)」を登場させることで、異なった視点から描いた令和版「平家物語」
毎回楽しみに視聴した。
ストーリー
未来を見通す目を持つ少女びわは、平家一門にささいなことから琵琶法師であった自分の父親を殺されてしまう。
自暴自棄になったびわは、平家一門の棟梁、平重盛(平清盛の長男)の屋敷に忍び込み、重盛に「お前たちはじき滅びる」と言い放つ。
この平重盛がいい。
栄華を極め「平家にあらざれば人にあらず」とおごる平家の中にあって、極めて常識人。
びわと同じように不思議な目を持つ重盛には亡者が見える。
平家の武士がびわの父親を殺したことを知ると「すまぬ」と詫び、自分と同じように不思議な目を持つびわを屋敷に引き取り、息子の維盛(これもり)・資盛(すけもり)・清経(きよつね)の三兄弟と一緒に生活させることにする。
権力争いと陰謀の渦巻く宮中。
平清盛と後白河法皇との対立。
そんな中で描かれる、三兄弟とびわのかけ合いは子供っぽくもあり、人間味にあふれている。
自然描写も美しく、平安時代の暮らしを丁寧に描くことで、平家も人の子、決して争いを望む人ばかりではないということが伝わってくる。
そんな彼らが滅んでいく様がストーリが進むに連れて描かれていく。
それはびわの見た未来であり、変えることのできない視聴者が知る歴史的過去でもある。
止め絵が絵になるアニメ
まぁ、画面が美しい。
アニメーションの動きはそれほど激しくはないが、止め絵で一枚一枚がそれだけで作品になるんじゃないかというくらい「絵になる」場面の連続だ。
登場する女性たちの描写もこれまでの「平家物語」には無い解釈、描写がされている。
平清盛の娘であり、天皇の妃となる徳子。
清盛の寵愛を受け、のち出家する白拍子の祗王(ぎおう)
白拍子であり、のちに源義経と恋仲になる静御前。
権力に振り回されながら、自分たちの生き方を模索する女性たちがしっかり描かれているのも、この令和版「平家物語」の特徴だ。
特にびわと親しくなる徳子は重盛亡き後は、物語の柱のひとつとなる。
春の夜の夢のごとし
びわと一緒に駆け回っていた三兄弟。
彼らの物語は琵琶法師によって語り継がれたり、能などの演目にもなっている。
清経(きよつね)は横笛の名手として知られるようになるが、源氏に追われ平家一門が太宰府に落ち延びた後、その太宰府からも追い出され、悲観した清経は豊前国柳浦にて入水自殺した。
維盛(これもり)は平家の総大将として富士川の戦い、倶利伽羅峠の戦いで敗北。戦いの恐ろしさに夜な夜なうなされるようになり、その後、屋島の陣から脱出し、高野山で出家、那智の沖にて入水。
資盛(すけもり)は平家一門と共に最後まで戦い、壇ノ浦の戦いで敗れると急流に身を投じて自害したといわれるが、生き延びたとの説もあり、アニメ「平家物語」でもそれを匂わせる描写がある。
歴史の教科書だと、誰が誰だかわからなくなりそうだが、こうしてアニメのキャラクターになると印象がガラッと変わる。
白拍子であり、のちに源義経と恋仲になる静御前。
権力に振り回されながら、自分たちの生き方を模索する女性たちがしっかり描かれているのも、この令和版「平家物語」の特徴だ。
特にびわと親しくなる徳子は重盛亡き後は、物語の柱のひとつとなる。
春の夜の夢のごとし
びわと一緒に駆け回っていた三兄弟。
彼らの物語は琵琶法師によって語り継がれたり、能などの演目にもなっている。
清経(きよつね)は横笛の名手として知られるようになるが、源氏に追われ平家一門が太宰府に落ち延びた後、その太宰府からも追い出され、悲観した清経は豊前国柳浦にて入水自殺した。
維盛(これもり)は平家の総大将として富士川の戦い、倶利伽羅峠の戦いで敗北。戦いの恐ろしさに夜な夜なうなされるようになり、その後、屋島の陣から脱出し、高野山で出家、那智の沖にて入水。
資盛(すけもり)は平家一門と共に最後まで戦い、壇ノ浦の戦いで敗れると急流に身を投じて自害したといわれるが、生き延びたとの説もあり、アニメ「平家物語」でもそれを匂わせる描写がある。
歴史の教科書だと、誰が誰だかわからなくなりそうだが、こうしてアニメのキャラクターになると印象がガラッと変わる。
娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。
「平家物語」は平家一門の栄衰、武士の台頭を描いた壮大な物語だが、未来が見える目を持った原作にはない「びわ」という少女を登場させたことにより、様々なエピソードが交差する「平家物語」を全11話という制約の中でうまくまとめている。
オープニングの生き生きとした平家の人々の笑顔。
静(御前)たちが川ではしゃぐ描写。
びわが猫を捕まえる動き。
最終話、出家し亡くなった人々に祈りを捧げる徳子(建礼門院)の語り。
まさに夢のように歴史を駆け抜けていった人物たちをとても魅力的に描いた「平家物語」だった。
Amazon Prime Videoで視聴 ↓
監督 山田尚子 脚本 吉田玲子
制作 サイエンスSARU
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「平家物語」は平家一門の栄衰、武士の台頭を描いた壮大な物語だが、未来が見える目を持った原作にはない「びわ」という少女を登場させたことにより、様々なエピソードが交差する「平家物語」を全11話という制約の中でうまくまとめている。
オープニングの生き生きとした平家の人々の笑顔。
静(御前)たちが川ではしゃぐ描写。
びわが猫を捕まえる動き。
最終話、出家し亡くなった人々に祈りを捧げる徳子(建礼門院)の語り。
まさに夢のように歴史を駆け抜けていった人物たちをとても魅力的に描いた「平家物語」だった。
Amazon Prime Videoで視聴 ↓
監督 山田尚子 脚本 吉田玲子
制作 サイエンスSARU
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