介護施設の「宿直」とは?
ユニット型特養。
うちの施設では、毎朝、宿直さんが玄関に届けられた新聞をユニットに配ってくれる。
宿直さんというのは、直接介護とは関わらない、夜間の緊急事態要員のことだ。
特別養護老人ホーム、身体障害者療護施設については、夜勤者(直接処遇職員)とは別に、宿直者を必ず配置すること(昭和62年9月18日付、厚生省社会局長通知『社会福祉施設における防火安全対策の強化について』)と義務付けられていて、夜勤帯の防火管理などを行う。
たいていの特養には「宿直室」というのがあって、夜間はそこに詰めていて、何もなければ夜間の巡回や、連絡業務などを行っている。
ユニット型特養。
うちの施設では、毎朝、宿直さんが玄関に届けられた新聞をユニットに配ってくれる。
宿直さんというのは、直接介護とは関わらない、夜間の緊急事態要員のことだ。
特別養護老人ホーム、身体障害者療護施設については、夜勤者(直接処遇職員)とは別に、宿直者を必ず配置すること(昭和62年9月18日付、厚生省社会局長通知『社会福祉施設における防火安全対策の強化について』)と義務付けられていて、夜勤帯の防火管理などを行う。
たいていの特養には「宿直室」というのがあって、夜間はそこに詰めていて、何もなければ夜間の巡回や、連絡業務などを行っている。
この配置義務は平成27年4月に緩和されて、特養において最低基準を上回る数の夜勤者を配置し、そのうちの1人を夜間における防火管理担当とした場合は、宿直を置かなくても良くなった。
しかし、ただでさえ介護員は足りていないので、今も宿直を置いている特養は多いだろう。
うちの施設では定年退職した元消防職員の方なんかがよく雇われる。
自分にもできること
宿直さんが届けてくれた新聞を、所定の場所から毎朝渡しに来てくれる男性の利用者がいる。
最初は「〇〇さん、新聞どこにあるかな?」という声かけだった。
その利用者は隣のユニット、廊下でつながり隣接する「協力ユニット」の利用者だったが、新聞は2つのユニットに一つしか配られないので、よく隣に探しに行くことがあった。
新聞はテレビの前のテーブルに置いてあった。
テーブルのそばのソファーにはその男性利用者が座りテレビを見ていた。
元新聞配達員だということは知っていたので、新聞に興味があるのではないかと思いたずねると、テレビを見ていた男性は、目の前のテーブルに置かれた新聞を渡してくれた。
そこから、昨日のプロ野球の結果についてだとか、たわいもないおしゃべりをして、お礼をいって自分のユニットに戻った。
そんなことが何度か続くと、私を見かけると新聞をわざわざ探して持ってきてくれるようになった。
しかし、ただでさえ介護員は足りていないので、今も宿直を置いている特養は多いだろう。
うちの施設では定年退職した元消防職員の方なんかがよく雇われる。
自分にもできること
宿直さんが届けてくれた新聞を、所定の場所から毎朝渡しに来てくれる男性の利用者がいる。
最初は「〇〇さん、新聞どこにあるかな?」という声かけだった。
その利用者は隣のユニット、廊下でつながり隣接する「協力ユニット」の利用者だったが、新聞は2つのユニットに一つしか配られないので、よく隣に探しに行くことがあった。
新聞はテレビの前のテーブルに置いてあった。
テーブルのそばのソファーにはその男性利用者が座りテレビを見ていた。
元新聞配達員だということは知っていたので、新聞に興味があるのではないかと思いたずねると、テレビを見ていた男性は、目の前のテーブルに置かれた新聞を渡してくれた。
そこから、昨日のプロ野球の結果についてだとか、たわいもないおしゃべりをして、お礼をいって自分のユニットに戻った。
そんなことが何度か続くと、私を見かけると新聞をわざわざ探して持ってきてくれるようになった。
正直、会話のきっかけになればくらいの思い付きだったので、そこまでしてくれると、忙しい時など(今持ってこなくても)と思わないではないが、受け取ってお礼をいうと喜んでくれる。
いつしかそれが彼の役割になっていった。
1年ほど前の話だ。
認知症でも忘れないこと
いつしかそれが彼の役割になっていった。
1年ほど前の話だ。
認知症でも忘れないこと
特養の生活では利用者が自発的に何かをすることは少ない。
「ご飯ですよ」「お風呂ですよ」「体操しましょう」と介護員が声をかけて、それに利用者が従うという構図が多く見られる。
その男性利用者はアルツハイマー型の認知症で、昼間はテレビの前のソファーに座り、時間になると食事やお風呂に案内され、夜は早々とベッドにつくという生活だった。
その男性利用者はアルツハイマー型の認知症で、昼間はテレビの前のソファーに座り、時間になると食事やお風呂に案内され、夜は早々とベッドにつくという生活だった。
新聞は介護員がテーブルなどに置いていたが、目が悪いからか、その利用者が読んでいる姿は見たことがなく、特に新聞に興味があるようには見えなかった。
だが「新聞を配達する」という役割だけは自発的に行う。
だが「新聞を配達する」という役割だけは自発的に行う。
1年前は多少の手助けだけで日常生活のほとんどを自分で行うことができていたが、最近になってトイレの場所がわからなくなったり、自室に戻れず他の利用者のベッドにもぐり込んだり、会話がかみ合わないことも増えて来た。
着替えも1人だと裏返しに着たり、裸の上にジャンパー1枚だったり、パジャマに着替えた数分後に普段着に着替えたりと、介助が必要になってきた。
介護員の誰もが「症状がすすんでるね」と口にするようになってきているが、新聞だけは律儀に届けてくれる。
以前から「雨降ってないか?」と天気を気にする発言が口癖だったが、きっと新聞配達員だった頃に毎日天気を気にしていたからだろう。
自分で読むことはないが、毎朝宿直さんが新聞を持って来てくれるのを、誰よりも心待ちにしている。
介護現場のアセスメント
認知症があり、会った人の顔をすぐ忘れたり、鏡の中の自分を娘と思い込んで会話をしている利用者に「洗い物を手伝って」と頼むと、台所にきて食器洗いを手伝ってくれる。
洗剤の出し方や、洗った物をどこに置くのかということを何度か説明する必要はあるが(忘れてしまうので)、洗い方は丁寧で職員がやり直さなくていいくらいだ。
ほめると「主婦ですから」とニコニコしてこたえる。
その一方で「お客に仕事をさせるなんて、ここは間違ってる」と洗濯物をたたむのを手伝いながら、隣の利用者に愚痴をこぼしている、元レストラン経営者の利用者もいる。
それじゃあと遠慮して頼まないようにすると、みんながやっているのを見て、自分から参加してくる。
人間相手だから当たり前だが、利用者への対応は難しい部分もあるし、楽しい部分もある。
既往歴や体の状態はもちろんだが、その人の経歴や、生活歴、性格、置かれている精神状態というものを考慮して(こうしたらどうかな)(こっちの対応の方がいいんじゃないかな)と考えるのは創造的というか、追求する楽しみのようなものがある。
もちろん、うまくいかないことの方が多いのだが。
こうした情報収集や分析、評価をすることを、介護福祉分野ではアセスメントと呼んでいる。
新聞配達員だったから新聞に興味があるのでは?
主婦として長年家事をしてきた経験から、洗い物ができるのでは?
発言と元レストラン経営者という経歴から、洗濯物たたみ(おしぼりやエプロンをたたむ)を仕事と考えているのでは? 愚痴が出るのは自分の能力をもっと認めて欲しいからでは?
など、自分なりの情報の分析と根拠をもとに、その人と関わる、援助する。
文字にすると難しく見えるが、社会の中では割と誰でも自然にやっていることだ。介護職に求められるのは、それをちゃんと情報として残し、共有し、評価して次につなげることくらいだろう。
評価というのは、洗い物をしてもらったら喜んでいた。自分の役割ができて嬉しそうだった。日々の目標ができていきいきしていた。といったような、変化のことを指す。
こうした人間心理の変化を理論化したのが「マズローの欲求階層説(5段階説)」だし、対人支援で重要な指針を示したのが「バイスティックの7原則」のような物になる。
どちらも介護福祉士国家試験の常連だ。
だが残念ながら、忙しい介護現場では往々にして情報収集や分析をいちいちしているヒマがない。
洗い物は介護員がやった方が早いし、洗濯物たたみもちゃっちゃと自分で終わらせる介護員もいる。
また、そういう介護員の方が「仕事が早い」と評価されがちなのも介護施設だ。
カーテンを開け閉めする役割を嬉々としてやっていた知的障害を持つ利用者さんが、力を入れすぎてカーテンの留め具(フック)を壊したら、たった一度の失敗で「カーテンの開け閉めは職員がするから利用者は触らないで」と決めてしまったリーダーさんもいた。
フックなど安い物だが、ほんの少しでもリスクがあったら、それを排除したいのが管理職だ。
こうして、職員の指示に従うだけの生活が繰り返され、利用者がテレビの前に並べられている、特養でよく見る光景ができあがる。
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着替えも1人だと裏返しに着たり、裸の上にジャンパー1枚だったり、パジャマに着替えた数分後に普段着に着替えたりと、介助が必要になってきた。
介護員の誰もが「症状がすすんでるね」と口にするようになってきているが、新聞だけは律儀に届けてくれる。
以前から「雨降ってないか?」と天気を気にする発言が口癖だったが、きっと新聞配達員だった頃に毎日天気を気にしていたからだろう。
自分で読むことはないが、毎朝宿直さんが新聞を持って来てくれるのを、誰よりも心待ちにしている。
介護現場のアセスメント
認知症があり、会った人の顔をすぐ忘れたり、鏡の中の自分を娘と思い込んで会話をしている利用者に「洗い物を手伝って」と頼むと、台所にきて食器洗いを手伝ってくれる。
洗剤の出し方や、洗った物をどこに置くのかということを何度か説明する必要はあるが(忘れてしまうので)、洗い方は丁寧で職員がやり直さなくていいくらいだ。
ほめると「主婦ですから」とニコニコしてこたえる。
その一方で「お客に仕事をさせるなんて、ここは間違ってる」と洗濯物をたたむのを手伝いながら、隣の利用者に愚痴をこぼしている、元レストラン経営者の利用者もいる。
それじゃあと遠慮して頼まないようにすると、みんながやっているのを見て、自分から参加してくる。
人間相手だから当たり前だが、利用者への対応は難しい部分もあるし、楽しい部分もある。
既往歴や体の状態はもちろんだが、その人の経歴や、生活歴、性格、置かれている精神状態というものを考慮して(こうしたらどうかな)(こっちの対応の方がいいんじゃないかな)と考えるのは創造的というか、追求する楽しみのようなものがある。
もちろん、うまくいかないことの方が多いのだが。
こうした情報収集や分析、評価をすることを、介護福祉分野ではアセスメントと呼んでいる。
新聞配達員だったから新聞に興味があるのでは?
主婦として長年家事をしてきた経験から、洗い物ができるのでは?
発言と元レストラン経営者という経歴から、洗濯物たたみ(おしぼりやエプロンをたたむ)を仕事と考えているのでは? 愚痴が出るのは自分の能力をもっと認めて欲しいからでは?
など、自分なりの情報の分析と根拠をもとに、その人と関わる、援助する。
文字にすると難しく見えるが、社会の中では割と誰でも自然にやっていることだ。介護職に求められるのは、それをちゃんと情報として残し、共有し、評価して次につなげることくらいだろう。
評価というのは、洗い物をしてもらったら喜んでいた。自分の役割ができて嬉しそうだった。日々の目標ができていきいきしていた。といったような、変化のことを指す。
こうした人間心理の変化を理論化したのが「マズローの欲求階層説(5段階説)」だし、対人支援で重要な指針を示したのが「バイスティックの7原則」のような物になる。
どちらも介護福祉士国家試験の常連だ。
だが残念ながら、忙しい介護現場では往々にして情報収集や分析をいちいちしているヒマがない。
洗い物は介護員がやった方が早いし、洗濯物たたみもちゃっちゃと自分で終わらせる介護員もいる。
また、そういう介護員の方が「仕事が早い」と評価されがちなのも介護施設だ。
カーテンを開け閉めする役割を嬉々としてやっていた知的障害を持つ利用者さんが、力を入れすぎてカーテンの留め具(フック)を壊したら、たった一度の失敗で「カーテンの開け閉めは職員がするから利用者は触らないで」と決めてしまったリーダーさんもいた。
フックなど安い物だが、ほんの少しでもリスクがあったら、それを排除したいのが管理職だ。
こうして、職員の指示に従うだけの生活が繰り返され、利用者がテレビの前に並べられている、特養でよく見る光景ができあがる。
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